2009 Fiscal Year Annual Research Report
多国籍企業のディスクロージャーとバリュエーションに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
19730314
|
Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
浅野 敬志 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (30329833)
|
Keywords | 所在別セグメント情報の質 / 情報の非対称性 / 市場のミスプライシング / 会計基準の評価 / 利益の持続性 / 情報開示戦略 / 多国籍企業の評価 / 資本コスト |
Research Abstract |
本研究の目的は、資本市場による海外業績の評価、その評価を受けての多国籍企業の評価、ディスクロージャーが海外業績の評価に及ぼす影響について、理論的かつ実証的に分析することにある。 昨年度までに先行研究のレビューと所在地別セグメント情報のデータベース化が完了していたこともあり、本年度は分析結果の報告を学会(日本経営分析学会や国際会計研究学会)などで積極的に行った。主な分析点は、(1) 多国籍企業の海外利益は資本市場から過小評価されているか、(2) 海外利益の過小評価は、所在地別セグメント情報の質が高くなれば緩和されるのか、の2点である。分析の結果、多国籍企業の海外利益(特に増益)の持続性が資本市場から過小評価されていること、および所在地別セグメント情報の質が低い企業では、海外利益の増益の過小評価が観察されたが、質の高い企業では観察されず、所在地別セグメント情報の質が海外利益の過小評価を緩和させることが明らかになった。 わが国では2010年4月1日以降に開始する連結事業年度から、新しいセグメント会計基準が適用される予定である。この新基準では国際的な会計基準とのコンパージェンスが実現していることもあり、米国などでみられるような資本市場へのプラスの効果が期待されている。新基準の導入により地域別情報の質が高まり、多国籍企業の海外利益の過小評価が緩和されるのであれば、会計基準のコンパージェンスという意味合いだけでなく、新基準を導入する意義は大きいと思われる。本稿で得られた結果は、わが国でも(資本市場への)プラスの効果が生じる可能性が高いことを示唆する。
|
Research Products
(9 results)