2008 Fiscal Year Annual Research Report
「永続的ソジョナー」中国人によるトランスナショナルな社会的統合の研究
Project/Area Number |
19730335
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
坪谷 美欧子 Yokohama City University, 国際総合科学部, 准教授 (80363795)
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Keywords | 国際移民システム / 中国人 / アイデンティティ / 永続的ソジョナー / リプリゼンタティブ・エスニシティ(representative ethnicitv) / 統合 |
Research Abstract |
本研究は、留学を契機として来日する中国人のアイデンティティや日本社会への統合についての考察を通して、日本社会および国際関係の変容を展望するものである。 今年度はとくに日本におけるニューカマー中国人の子どもの教育、とりわけ高校進学を果たした生徒たちが抱える問題と高校でのサポートについて考察した。近年では中国で中学を卒業もしくは高校に進学後に来日し、日本の高校への入学を希望する者の増加も顕著であるが、ニューカマー中国人の子どもたちの間にも、日本での教育について抱えている困難さが多様化していることは事実である。かれらが入学後に抱えるさまざまな問題のなかでは、第一に新来の生徒たちは自分が日本の高校で学ぶ意味が客観視できていないことが大きかった。第二に母国の中国と日本の学校文化の違いから、日本での進学を望みながらもうまく高校での学習を進める動機づけを持てずにいる生徒が少なくないことも明らかになった。一方でかれらは、母国での高校生活や進学・就職にも大きな期待を持ててはおらず、日本の高校生のとくに服装や行動といった部分への「過度な」同化や「逃避」に向かうこともある。なかには、学校に通うことに価値を見出さない学外の仲間(日本人もしくはエスニック・グループ)の文化に「埋没」しがちな者もみられた。こうした中国人も含め外国につながる生徒を受け入れる教育現場においては、生徒が置かれている状況および問題を自覚し、高校生活や卒業後に役立つ力をつけることがいかに必要なのかということが少しずつではあるが認識されるようになっている。ことさら日本語指導や学校適応のみを強調する見方から、生徒らの声を聞くことや「重要な他者」との出会いの重要性が見直されている。このほか、かれらのへの支援のために、外部の援助者が学校現場に関わることの意義や地域社会におけるサポート・ネットワーク構築の可能性についても考察を行った。
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Research Products
(1 results)