2009 Fiscal Year Annual Research Report
外傷や疾病等による外貌損傷者の生活支援システムに関する社会学的研究
Project/Area Number |
19730338
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
的場 智子 Toyo University, ライフデザイン学部, 准教授 (40408969)
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Keywords | 熱傷 / 韓国 / 社会福祉 / クリティカルパス / 当事者組織 / セルフヘルプ / 外貌 |
Research Abstract |
本年も、重傷熱傷体験者が退院後地域生活を再開し、社会復帰していく上で必要なシステムに関する国内外の文献を収集するとともに、体験者や支援者へのヒヤリングを行った。熱傷治療の実施数が世界最大の韓国では、患者の退院後の支援システムも日本より開発が進んでいる。漢江誠心病院の熱傷センター・社会福祉室では、長期入院患者を対象に、クリティカルパスの研究が進められていた。重傷熱傷体験者は治療の後でも拘縮や肥厚性瘢痕、掻痒症などの後遺症のために多様な心理社会的、経済的問題を抱え、社会復帰やリハビリに関する問題を経験しなくてはならない。患者たちには、その都度の状況に適した、積極的な治療が受けられるように、患者そして家族それぞれに対してもタイムリーな社会福祉サービスが必要となる。そのような際により適した対応ができるよう、クリティカルパスが開発されることになった。現在ではクリティカルパスは患者やその家族の地域生活をサポートする上で非常に有益な手段となっており、心理社会的問題の対応において、以前よりもふさわしい時期に必要な事項の相談援助が行えるようになっている。これを用いたことで患者からの反応もよく、また医師や看護師から聞く患者の様子も回復によい影響を与えていたという結果が得られている。わが国ではこのような熱傷体験者を対象とした退院後のクリティカルパスの開発はなされていないため、熱傷患者により密着した、社会心理的背景にも考慮した十分な治療方針がまだ立てられていないのが現状である。日本の唯一の熱傷体験者の団体である「熱傷フェニックスの会」も以前に比べ活動回数が減っており、外貌損傷者の生活支援システムを構築していく上では、クリティカルパスの開発も含め、熱傷治療の医療環境をよく理解した社会福祉士の更なるサポートが必要な状況といえるだろう。
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