2007 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの家族政策と家族の社会的関係:自主的協働保育所の事例から
Project/Area Number |
19730344
|
Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
木下 裕美子 Kyoto University of Foreign Studies, 国際言語平和研究所, 嘱託研究員 (70434644)
|
Keywords | 社会政策 / 社会調査 / 保育所 / 国際研究者交流 / フランス |
Research Abstract |
近年、日本の人口動態や社会・家族の変化を背景にして、家族政策への関心が高い。マクロ的な視点による国際比較制度分析の研究蓄積が多い一方で、具体的な事例を扱う研究の蓄積が不足している。フランスの家族政策は、基本的理念として相互扶助や連帯を基本的理念として設計されてきたが、現在は「親業」の支援が中心課題となり、かつて「保育」を回復するために出現した自主的保育所「親保育所(通称)」は1981年以降公的な保育施設の一つとなっている。日本では不足する保育所を補うように存在する「預けあい」や自主的保育が存在するが、なかなか公的支援をうけにくい状況にある一方で、地域での子育てを意味した「社会的連帯」が社会政策の理念として用いられている。このような状況の中、「連帯」という用語は「相互的」、「互恵的」、「互酬性がある」というそれぞれの意味を帯びながら、それぞれ置き換え可能な曖昧な意味で用いられている。そこで、本研究では、本来、自主的保育として発展してきたフランスの「親保育所」の事例を観察することによって、その社会理念としての「連帯」がどういった形で「親業」を実践する場に立ち現れてくるのかを探ってみた。調査の結果、以下のことが示唆された。親と職員の関係は、雇用者と被雇用者であると同時に、非専門家と専門家という関係に意識的であることから、情緒的融合性を重視しない。そして、「親業を実践する場の確保」と「子の育ち」は「親保育所という機関の存続」という目的を通して可能になることから、施設の継続性が最重要課題であり、そのために、親と職員は直接的な互恵性や互酬性の確認を避けるように、それぞれの役割(保育運営=親の役割、子どもへの教育=専門家の役割)を規定し、機関を媒介に関係を調整するのである。
|
Research Products
(2 results)