2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代民間公益活動の経営形態・理念及び組織間関係の動態的研究-報徳社の発展を中心に
Project/Area Number |
19730348
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
川野 祐二 Shimonoseki City University, 経済学部, 准教授 (30411747)
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Keywords | 報徳結社 / 非営利組織 / 公益団体 |
Research Abstract |
報徳組織は、本社支社による結社ネットワークを形作っている。本社は支社に対する強制力をある程度有し、同時に支社からみた本社は模倣すべき組織形態とされる。報徳運動の中心の一つは、福住正兄であるが、彼は明治7年に『富国捷径』を記して、結社型の設立運営方法を示した。これは報徳結社のマニュアルとなり、全国の報徳社がこの方式を真似た。つまり報徳結社群にとって、模倣的制度化の原点というべき書籍のうちの一冊である。そこでは本社制度の導入を促し、本社を中心としたネットワーク化に言及している。その報徳ネットワークとは、単に模倣的なだけでなく、強制や規範をも持ち得た、強力な制度的同型化の様相をも呈していた。制度的同型化を推し進めて報徳結社群を増やした要因には、政府による力も見逃せない。日露戦争を契機として疲弊した地方を復興するために、明治政府は地方改良運動を行った。そこで近代国家の官僚たちの目にとまったのが報徳結社群である。政党色が薄く、地域に根付いた報徳結社は、明治官僚にとって好都合であり、報徳側にしても疲弊した地方を助けることは本来の趣旨であったと考えられる。しかし、この経緯はさらに詳しく調べる必要がある。 民間の自主的結社として、ある種の非営利組織群が拡大発展する経緯というのは、『報徳記』『二宮翁夜話』が明治の非営利市場にもたらしたように、思想的実用的に強く人を惹きつける、目の覚めるような一撃が起きたことによって始まるのではないだろうか。組織群拡大の意図は、明治の報徳の指導者たる福住や岡田や富田にもあった。しかし、そこには青写真としての明確な拡大戦略は示されておらず、拡大の意図を持ちながらも、創発的に拡大戦略が形成され実行されていったと解するのが自然である。こうした報徳結社拡大の経過を、個体群生態学的に捉えるのか、また拡大戦略として捉えるべきなのかは、今後の課題であり、丹念に発展の過程を追うことによって明らかにしていきたい。
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Research Products
(2 results)