2008 Fiscal Year Annual Research Report
児童養護施設小規模ケアにおける環境設定のあり方に関する研究
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19730352
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉余子 Saitama University, 教育学部, 講師 (10389702)
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Keywords | 児童養護施設 / 小規模ケア / ケア形態 / 小規模化 |
Research Abstract |
昨年度の研究成果を踏まえ、今年度は、小規模化を進めている過渡期にあるA児童養護施設にご協力いただき、2本の調査研究を行った。 1つは、児童養護施設職員(ホーム担当)を対象としたインタビュー調査である。子どもたちと生活をともにする中で、特に工夫している点、苦慮している点、今後の課題等について半構造化面接を用いてインタビューを行った。その結果、どの職員も「家庭的な生活の提供」を目標・キーワードにおき、日々子どもへの援助のあり方を模索していること、子どもとの関係が深まるほど、子どもの実親へのジェラシーや葛藤が生じること(「こんなにしてあげているのに、まだ、『お母さんがいい』『お母さんに会いたい』とか言うのが理解できない」等)等が明らかとなった。 もう1つは、児童養護施設入所児童10名を対象とした半構造化面接によるインタビュー調査である。年齢、性別、生活するホームが偏らないよう配慮し、1名ずつ個室にて40分〜60分、施設生活に関する満足/不満、要望、感想、家庭への思い等について自由に語ってもらった。その結果、多くの子どもたちが施設生活を肯定的に捉えていることが明らかとなった。しかし一方で「どちらか選ぶなら親(家庭)」「ここは家じゃないから」といった実親への強い思いや「転校がいやだった」といった施設入所にともなうネガティブ体験に関する語りも多くみられた。子どもたちが「施設に来て良かった」と心から思えるには長い年月が必要であるし、施設生活への満足度が影響することを再確認した。 親と暮らせない子どもたちに「家庭」を感じさせてあげたいと願いつつ職員は日々子どもたちと関わっている。しかし、子どもたちと職員との間には「家庭」をどう捉えているかという点について大きなギャップがある。職員は「家族になりたい」と考えるが、子どもは職員を「家族」と思わないし、施設を「家庭」と思わない。今後も引き続き、家庭で暮らすことができない子どもにとっての社会的養護のあり方について研究を進めたい。
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