2007 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの少子化問題と出産奨励運動に関する歴史研究
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19730355
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
河合 務 Tottori University, 地域学部, 講師 (10372674)
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Keywords | 少子化 / 出産奨励運動 / フランス第三共和政 / 教育 / 家族・家庭 / 家族支援・子育て支援 / 人口減退 / ネオ・マルサス主義運動 |
Research Abstract |
近年の少子化傾向にともなって家族支援・子育て支援の必要性が叫ばれる一方で、何人の子どもを産むのかという問題は夫婦間の自由な判断に委ねられるべき私的な問題であるという観点から、近年のわが国の少子化対策の正当性を基礎づける理念自体の再検討の必要性が論じられている。本研究は、こうした議論において度々言及されるフランスの歴史的経験を参照枠として、わが国の少子化論議への含意を探ることを目的とする歴史研究であり、とりわけフランス「出産奨励主義(ナタリスム)」の源流を形づくった運動団体である「フランス人口増加のための国民連合」の運動方針、設立の背景、運動の実績等に関し、史料に即して明らかにすることを目的とするものである。 本年度は、(1)同団体の機関誌の系統的収集、(2)同団体の会員・関係者の著作物の収集、(3)同団体が1918年から1944年まで発行していた育児難誌『女性と子ども』誌の系統的収集を重点目標とした。作業の進展としては、(1)は、同誌刊行開始(1899年)から1955まで、(2)については第三共和政期(1870-1940年)からヴィシー体制期(1940-1944年)まで、(3)については全編(1918年から1944年まで)を入手することができ、同団体の運動方針や設立の背景について詳細に解明しうる史料的基盤を固めることができたと考えている。特に、同団体が第三共和政期(とりわけ第一次世界大戦後)において教育に対する並々ならない関心を示し、出産奨励主義を普及させる機関として学校に注目した点が機関誌の記事などから浮かび上がってきた点は、本年度の史収集作業における収穫であったと考えることができる。同団体によって展開された教育キャンペーンの教育史的意義の解明を次年度以降も継続する予定である。
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