2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの少子化問題と出産奨励運動に関する歴史研究
Project/Area Number |
19730355
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
河合 務 Tottori University, 地域学部, 講師 (10372674)
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Keywords | フランス第三共和政 / 出産奨励運動 / 人口減退 / 「フランス人口増加連合」 / 教育 / 家族 / 産児制限運動 / 新教育運動 |
Research Abstract |
近年、フランスは「ベビーブーム」を迎えている国として注目され、家族手当など手厚い経済的支援がしばしば言及されるが、出生率低下問題に長く取り組む過程で、子ども・若者の家族形成意識への教育的働きかけが行われてきた同国の歴史的経験に関しては、これまで詳しく紹介されてきたわけではない。本年度実施した研究においては、家族形成に関する「意識改革」が強調されつつある日本の現状を照射する観点から、フランス第三共和政期(1870-1940年)の出産奨励運動と教育との関わりについて、1896年に統計学者J.ベルティヨン(1851-1922)によって設立され、現在も活動を続ける運動団体「フランス人口増加連合」の教育活動を中心に考察した。政治家・行政官・教員・ジャーナリストらが会員として名を連ねた同団体が、公教育行政の後押しをも受けながら多子家族形成に向けた学校教育の実現に向けた活動を展開していく模様を検討し、そのイデオロギー性を明らかにした。 また、「フランス人口増加連合」と産児制限運動団体「人間改造同盟」との競合関係を、双方の団体が「望ましい家族」像をめぐって、ともに宣伝活動を行う模様を中心に考察した。 さらに、「ロッシュの学校」を設立した新教育運動の理論家E.ドモランの著作『アングロ・サクソンの優越性は何に起因するか』『新教育』の分析から、人口減退への危機論におけるドモランとベルティヨンの共通性(移民増加、植民地経営を困難にする要因としての人口減退)、人口減退の原因論における両者の相違点(「家産分割」を原因と考えるか、「文明化」を原因と考えるか)についても明らかにした。研究成果については、日本教育学会機関誌『教育学研究』第75巻第3号に投稿・掲載された。
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