2009 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの少子化問題と出産奨励運動に関する歴史研究
Project/Area Number |
19730355
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
河合 務 Tottori University, 地域学部, 准教授 (10372674)
|
Keywords | 家族 / 出産奨励運動 / 「人口問題教育」 / アソシアシオン(結社) / 少子高齢化 / 人口ピラミッド / プロパガンダ / 植民地問題 |
Research Abstract |
近年、フランスは「ベビーブーム」を迎えている国として注目され、家族手当など手厚い経済的支援がしばしば言及されるが、出生率低下問題に長く取り組む過程で、子ども・若者の家族形成意識への教育的働きかけが行われてきた同国の歴史的経験に関しては、これまで詳しく紹介されてきたわけではない。本年度実施した研究においては、フランス第三共和政末期(1930年代)~ヴィシー体制期(1940年~44年)における出産奨励運動の考察を集中的に取り扱い、「フランス人口増加連合」とその周辺に残された史料をもとに同団体が主導して学校教育のカリキュラムに導入された「人口問題教育」の内実について集中的に考察した。 とりわけ、1939年に制定された「家族法典」における「人口問題教育」に関する規定(第142条)の成立事情や、ヴィシー政府公認による「人口問題教育」に関する教師用手引書を中心的な素材として、この教育の具体像を明らかにすることに努めた。これらの研究成果については、日本教育政策学会および教育目標・評価学会に論文を提出し査読を受けた後、学会誌に掲載されている。 また、第三共和政期(1870~1940)に簇生した家族結社における「フランス人口増加連合」の位置づけを探る意味で、当時の家族結社の裾野の広がり史料・先行研究から跡付け、さらに同団体と協同関係にあった「生活改善同盟」の結成の背景事情や活動内容を<家族の習俗>に批評するモラリストたちの共同体という視点から検討した。 さらに、戦後フランスにおける出産奨励運動をめぐる状況変化に関して、1967年に制定された「ニュヴィルト法」の成立を手がかりとして考察した。これは本研究課題の最終年度である22年度の研究の基礎的作業という意味をを有している。 なお、戦時期日本の「産めよ殖やせよ」政策を、日本版の出産奨励運動という視点から検討の俎上に載せ、「結婚報国懇話会」とその関係者の著作を中心として考察した。<結婚>なるものが、個人的な意味だけでなく、人口増加政策のターゲットとして国家的な意味をもたされていたという状況を明らかにすることができたと考えている。
|
Research Products
(6 results)