2009 Fiscal Year Annual Research Report
親と暮らす障害のある若者の自立に関する研究-日常生活構造と将来生活設計に着目して
Project/Area Number |
19730361
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
新藤 こずえ Kochi Women's University, 社会福祉学部, 助教 (90433391)
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Keywords | 障害のある若者 / 社会的自立 / 生活構造 |
Research Abstract |
本研究では、親と同居している障害のある若者の日常生活構造と将来生活設計を当事者および彼らが日常的に関わる人々の視点から明らかにすることを目的として次の2つの柱を設定した。第一に、親と同居する障害のある若者の日常生活構造を把握すること。第二に、障害のある若者本人、その親、福祉サービス提供者の三者のそれぞれが考える障害のある若者の「自立観」と将来展望を明らかにすることである。 平成21年度は、《障害のある若者本人、その親、障害のある若者に関わる福祉サービス提供者の三者それぞれが考える「自立観」および将来展望の実現可能性についての検討》のうち、障害のある若者本人を対象とした面接調査を実施した。昨年までに行っていた、親と福祉サービス提供者との自立観と照らし合わせた上で、《障害のある若者における現在の生活から将来への生活への移行の実現可能性と阻害要因の分析》を行った。 その結果、第1に、親と支援者の自立観が異なっていること、ADL自立を重視していることは共通しているが、親は、ADL自立=子の自立と捉える「自立観」を有し、それを実現不能なもの捉えることと、親自身の子に関わらねば/関わりたいとの思いが、「子の自立」という目標からそれた関わりになっている。一方、支援者は当事者の自立を「目標」ではなく、「過程」と捉えていた。そのような自立観に基づき、当事者自身の今後の活動の広がりをもたらすためにADL自立や他者との関係性構築を重視していた。第2に、障害当事者は、親と支援者の異なるそれぞれの自立観に同意しながらも、その狭間で揺れ動いているということである。それは、子どもから大人になる過程で、若者なら誰しもが抱く、親と自分の考えの相違、周囲との関係で葛藤するという状況に他ならない。しかしながら第3に、当事者、親、支援者の誰もが、自分(障害者)が自立している姿が具体的には描き出せていないことも明らかになった。 したがって、障害者の自立イメージをつくりあげていくには、まずは、障害の有無にかかわらず、子どもが大人になる道筋を中心に置き、誰しもが共通する自立の実態を捉えることが、今後の課題となるだろう。
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