2007 Fiscal Year Annual Research Report
自己愛人格傾向のストレス対処過程における基礎的・臨床的検討-介入に向けて-
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19730429
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
小西 瑞穂 Shiga University of Medical Science, 医学部, 助手 (90378448)
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Keywords | 自己愛人格傾向 / 精神的健康 / ストレス過程 / エゴグラム / ポジティブ・イリュージョン / 素因-ストレスモデル / タイプA行動パターン |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代青年の間で特に注目される人格特性の一つ、自己愛人格傾向(以下NP)のストレス過程について検討することである。平成19年度にはまず、NPの特徴をより明らかにするために、大学生を対象にエゴグラムとの関連を検討した。その結果、厳格で、現実的・効率的に物事を処理し、自由奔放で協調性に乏しい一方で、世話好きな面があることを見出した。また、NPの高い者は低い者に比べて抑うつ度が低く、主観的幸福感が高い状態にあることが示唆された(滋賀医科大学雑誌、2008掲載)。次に、適応的な人に認められるという自己に対する肯定的認知バイアスであるポジティブ・イリュージョンとNPとの関連を検討した結果、NPの中心を成す自己に対する強い肯定的感覚とは非現実的にポジティブに捉えられたものであり、この2つの概念は非常に関連が深いということが示唆された(同志社心理,2007掲載)。相互協調的自己を有する日本社会(北山・唐澤,1995)においては社会適応上に問題が生じる可能性が考えられるが、この研究からもNPの精神的健康が個人内において高いことが示唆された。そこで、素因-ストレスモデルを用いて、NPがストレスに脆弱な素因であるかを大学生を対象に検討した(パーソナリティ研究,印刷中)。その結果、NPの高い者がストレッサーを多く経験すると、男性では抑うつ反応および自律神経系活動性亢進反応、女性では身体的疲労感が増加し、一方ストレッサーの少ない状況ではこれらのストレス反応がNPの低い者や平均的な者に比べて最も少なかった。つまり、NPは個人の精神的健康を部分的に支えるが、それはストレッサーの少ない状況に限定され、ストレッサーの多い状況ではストレス反応を生起しやすい、ストレスに脆弱な素因と考えられる。さらに、コーピング・パターンの一つであるタイプA行動パターンとNPとの関連を検討した(日本健康心理学会,2007発表)結果、NPがタイプA行動パターンの敵意行動を媒介すると抑うつ、完璧主義的傾向を媒介すると自尊感情を促進することが明らかになった。 以上より、NPはストレッサーが少ない際には精神的健康を高める要因となるが、ストレスに脆弱な素因と考えられ、社会問題化している引きこもりやNEETの思春期・青年期心性とも深く関連している可能性がある。従って、次年度以降はこの要因の検討のため、コーピング・パターンに焦点をあて、介入を視野にいれた研究を進めていく。
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Research Products
(9 results)