2007 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病における認知行動療法の効果に関する脳機能画像研究
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19730431
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 一貴 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (10403594)
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Keywords | うつ病 / 認知行動療法 / 脳機能 / f MRI |
Research Abstract |
これまで,Beckの認知理論をはじめとする抑うつの認知行動理論に基づいた認知行動療法が数多く実施され,うつ病患者の抑うつ症状や心理社会的機能の改善に効果がみられることが報告されている。しかしながら,うつ病患者の認知障害の生物学的基盤となる脳内メカニズムについては不明な部分が多く,認知行動療法による症状・機能の改善効果が,どのような脳内機序によるものなのかは未だ明らかではない.本研究では,健常対照者および認知行動療法前後のうつ病患者を対象として,認知課題遂行中の脳活動領域をfMRIにより精査した.これにより,うつ病患者の認知障害がいずれの脳領域と関連しているか,また認知行動療法を施行することによりどの脳領域の機能改善がみられるかを検討した.健常対照群では,意志決定課題遂行中において右前頭前野,右頭頂葉,視床・基底核の活動が認められた.一方で,うつ病患者群では,認知行動療法による療法前では,それらの脳領域の活動は認められなかった.療法後では,ベック抑うつ尺度得点の改善の度合いが高いうつ病患者ほど当該領域の脳活動が上昇していることが認められた.これらの結果から,うつ病患者において,認知行動療法実施後に,うつ症状の改善度に対応して特定の脳領域の活動性が上昇し,脳機能が改善することが示された.本研究で得られた成果により,脳機能画像法が,認知行動療法など心理療法の治療効果の客観的評価法となる可能性が示唆された.
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