2007 Fiscal Year Annual Research Report
回想法は高齢者の認知症予防および心理的well-beingの改善に有効か
Project/Area Number |
19730446
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
野村 信威 Osaka University of Human Sciences, 人間科学部, 助教 (90411719)
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Keywords | 高齢者 / 回想法 / ライフレヴュー / 認知症 / 効果評価 / well-being |
Research Abstract |
本研究では,地域在住の健常な高齢者に対してグループ回想法を実施してその心理的効果を検討するとともに,回想法の効果評価における個別的な検討の意義について検討を行った。 デイハウスを利用する在宅高齢者に対してグループ回想法への参加を依頼し,承諾した8名を対象者とした。内訳は男性1名,女性7名,平均年齢77.9歳,標準偏差11.7歳だった。対象者の居住形態は,一人暮らしが5名,家族と同居が3名だった。 グループ回想法は原則として野村・橋本(2006)の枠組みに沿って行った。回想法のセッションは毎週あるいは隔週の頻度で決まった曜日・時間に設定され,デイハウスにて計8回が実施された。1回のセッションは約1時間に設定した。写真などの回想のきっかけとなる物品が提示され,参加者は回想を語るように促された。各セッションでは,小学校時代や青春時代など時系列に従った大まかなテーマを設定した。スタッフはリーダー1名とコ・リーダー2,3名からなり,それぞれセッションの司会進行と聴覚機能の低下した参加者のサポートを行った。 体調不良を理由に脱落した1名を除いた7名について,はじめに介入前後での心理的well-beingの変化を検討した。平均値の差の検定の結果いずれの指標でも有意な差は認められなかった。 対象者ごとの得点の変化を検討したところ,得点が低下した2名は介入前の人生満足度の得点が高いこと,介入前の得点がもっとも低い対象者でもっとも大きな得点の増加が認められた。 本研究の分析対象者は少数ではあるが,有意な結果が認められなかった理由として,回想法による心理的効果は対象者により異なるため,全体の平均値を検討した場合に効果が相殺される可能性が考えられた。人生満足度で多くの対象者の得点の増加が認められたことは,人生満足度の改善を報告した野村・橋本(2006)の結果に合致すると考えられた。
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