2009 Fiscal Year Annual Research Report
関係の文脈における攻撃性の組織化の研究:表象および実際の対人関係との関連
Project/Area Number |
19730448
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
工藤 晋平 Hiroshima International University, 心理科学部, 講師 (70435064)
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Keywords | 臨床心理学 / 攻撃性 / 心的障害 / 愛着理論 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に続く分析と追加データの取得を行なった。WatersらによるSBS法は、提示された刺激語群によって作成された物語に現れる、「心身の苦痛」に対処する親密な2者(母子、カップル)の関係の安全性を捉えるものであった。本研究では昨年度、その刺激語群を改変し、攻撃性の要素を含め、怒りなどの「攻撃性」を取り扱う2者の安全性という点での個人の関係に関する表象の安全性を捉えることを試みた。 今年度の分析として、これら2つの測定法による表象の安全性と昨年度用いた親密な関係における葛藤解決方略(HICI)との関連を検討したところ、Watersらによる方法(SBS法)よりも、本研究による方法(SBS-R法仮称)の方がHICIの中の強制的(攻撃的)な葛藤方略との関連が見られることが示された。その関連は昨年度検討された、愛着スタイルとの関連よりも相関係数において大きなものであり、SBS-R法による表象測定が、親密な関係における攻撃性の予測に関して、有用な測定ツールとなることが期待される。 他方、SBS法は今年度新たに取得したデータにおいて、境界例心性との強い関連を示した。境界例心性とは境界性人格障害に類似した青年の心性であり、情緒的な不安定性や不安定な対人関係などを特徴としている。その関連は質問紙による愛着測度との関連とは異なる独自のものであり、こうした対人的、情緒的な安定性への予測においてはSBS法が有用であることが示唆される。 本研究を通じて、SBS法、SBS-R法はそれぞれに異なる領域の「関係に関する表象の安全性」を捉えていることが示されたが、これはSBS-R法の改変が適切であったことを示すと同時に、それぞれの対人関係上の問題に関わる表象の活性化の寄与を明らかにするものであったと考えられる。
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