2008 Fiscal Year Annual Research Report
不眠の精神的・身体的健康度への影響と非薬物療法の適応に関する研究
Project/Area Number |
19730454
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Research Institution | Neuropsychiatric Research Institute |
Principal Investigator |
内藤 陽子 (駒田 陽子) Neuropsychiatric Research Institute, 研究部, 研究員 (40451380)
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Keywords | 不眠 / 精神的健康 / 身体的健康 / QOL / 抑うつ / 睡眠薬 / 睡眠相後退症候群 / メラトニン |
Research Abstract |
不眠症は睡眠障害の中で、疑いなく最も頻度が高い。現在、不眠症治療はベンゾジアゼピン系もしくはベンゾジアゼンピンアゴニストに属する睡眠薬による薬物療法が中心だが、睡眠薬治療に際しては、通常散見される副作用(筋弛緩や転倒、翌日の作用持ち越し)だけでなく、長期使用による弊害(耐性形成、常用量依存、精神生理機能への悪影響)にも配慮しなくてはいけない。薬剤服用期間が長期化しやすいことを考えると、睡眠薬服用の契機や慢性使用の背景を明らかにし、その対策を立てる必要がある。 本研究では、地域住民に対する横断調査研究ならびに睡眠外来受診患者を対象としたレトロスペクティブ研究を行った。地域住民約3,000人を対象に行った調査では、不眠者における睡眠薬使用の関連要因として、女性、加齢、抑うつ症状、治療中の病気が存在する、睡眠の質の悪化、入眠時間延長が抽出された眠りの満足度に問題を有していることが、睡眠薬を使用する契機になるものと考えられる。 また、睡眠薬使用下における非不眠群の精神的健康は不眠群に比して有意に高く、かつ睡眠薬非使用の不眠群よりも高かった。しかし、睡眠薬使用下の身体的健康については、不眠群と非不眠群で有意な差はなかった。この所見は、睡眠薬使用による不眠の解消によって精神的不健康度は改善するものの、身体的健康度については睡眠薬使用の負の影響を受ける可能性があるため、充分な改善が得難いことを示している可能性がある。 過去の不眠症に対する治療は、睡眠の症状(夜間の睡眠困難)のみに焦点を合わせる場合が少なくなかったが、今後、日中の機能障害やquality of life(QOL)を視野に入れた治療計画を立てることが重要である。
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