Research Abstract |
今年度は,自伝的記憶に関して,何がどう語られるのかといった,内容面での詳細な分析を行いつつ,最終年度であることから,これまで蓄積してきた語りや認知発達のデータと,22年度に追加したデータをあわせ,新たな解釈の可能性と総括を行った。新たな視点として,メタ認知の発達という視点からデータの解釈を行い,その成果の一部については国内の学会で発表した。具体的には,4歳前後の時期は,一定の言語能力が備わり内省的な認知活動も芽生え,メタ認知的な活動の質が大きく変わってくる時期であるが,それにあわせて,語りや自伝的記憶の想起状況が変わってくる可能性が示唆された。また,4歳前後のメタ認知的なモニタリング過程の発達を経て,5歳以降の自伝的記憶やメタ認知能力の発達につながっていく可能性も示唆されたが,その詳細のメカニズムの追究は将来的な課題である。また,従来の成人の知見等と比較し,かつ,新たに追加したデータと照らし合わせながら行った内容面の分析から,子どもの時期の語り方の特徴が示唆された。自伝的記憶の量に個人差はあるが,その変化の発達過程に共通性がある一方で,内容そのものは,個人差があり多様であることが確認された。個人差について,主に言語との関連から考察したが,個人差の要因は不明であり将来の検討課題である。まとめると,本研究により,自伝的記憶の初期の発達過程について大きな示唆を与えられるにいたったと思われ,自伝的記憶の生涯発達研究に貢献できたと思われる。
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