2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730458
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
畑 敏道 Doshisha University, 文学部, 准教授 (50399044)
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Keywords | オレキシン / 脳内報酬系 / 脳内自己刺激 / コルチコトロピン放出因子(CRF) / ドーパミン |
Research Abstract |
平成20年度の研究では、腹側被蓋野ヘオレキシンA投与が、同部位のドーパミンニューロンの投射部位である扁桃体中心核、分界条床核のコルチコトロピン放出因子(CRF)含有ニューロンを賦活するか否かを検討した。その結果、オレキシンA投与によって扁桃体中心核ではCRF含有ニューロンが賦活されるが、分界条床核では賦活されないことが明らかになった。これまでの研究で、腹側被蓋野へのオレキシンA投与は、1)脳内自己刺激行動(外側視床下部の内側前脳束に刺激電極を留置し、ラットがオペラント箱内の小穴に鼻を差し入れると刺激電極を介して同部位が刺激される行動)の閾値を上昇させ、2)扁桃体中心核、分界条床核でのドーパミン放出を増加させること、また3) オレキシンAによる閾値上昇はコルチコトロピン放出因子(CRF)阻害薬の投与によって抑制されることが明らかになっていた。これらの結果をまとめると、腹側被蓋野で放出されたオレキシンAは扁桃体中心核でのドーパミン放出を増加させることで同部位のCRFニューロンを賦活し、それによって脳内自己刺激閾値が上昇することが示唆される。以上の結果は、薬物依存の形成/維持過程に見られる嗜癖性薬物の過剰摂取や退薬に伴う不快な情動経験の発現に、オレキシン系とCRF系とが関与している可能性を示唆している。このような知見は、薬物中毒の症状形成に至る過程の理解や新しい治療法の開発につながる大変意義深いものであり、臨床的応用を見据えたさらなる基礎データの蓄積が必要である。
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