Research Abstract |
1. 視覚・前庭感覚モダリティ間依存割合の個人差の計測 初年度に構築した視覚・前庭感覚同時制御実験環境を用いて, 30名の被験者を対象として, 初年度の実験データを参考にして, 姿勢制御のモダリティ間依存割合を計測した。その結果, 姿勢制御について, 多くは前庭感覚が優位であったが, 少数は視覚優位であった。また, 視覚/前庭感覚比は, 0.01から8.91と非常に幅が広く, 予想通り, 個人差がとても大きいことが示された。 2. 身体動揺と視覚・前庭刺激間のリアルタイムフィードバック実験の開発と, それを用いたモダリティ間依存性の可塑性の検討 身体動揺をリアルタイムに計測し, それか基づいて, 視覚刺激および前庭電気刺激をリアルタイムに操作してフィードバックする実験システムを開発した。次に, 1.の実験で測定した各被験者のモダリティ間依存割合を基準として, 能動的な身体動揺に連動してリアルタイムに視覚刺激を操作する刺激条件と前庭感覚刺激を操作する刺激条件を被験者群に分けて設定し, 実験を行った。また, 視覚, 前庭ともに更に被験者を2群に分け, 視覚・前庭感覚刺激それぞれが身体動揺を促進する方向の条件と抑制する方向の条件の計4条件を設定して実験を行った。被験者は, 毎日1分間の順応を10試行繰り返し, 7日間に渡って提示されて, 長期順応した。8日目には, 1.と同じ実験を行い, 姿勢制御の視覚・前庭感覚モダリティ依存性を測定した。その結果, 身体動揺をより減少させる前庭刺激を与えた条件群では, 逆に前庭感覚に対する依存性が増加した。また, 同様に身体動揺を抑制する視覚刺激を与えた条件群でも, 視覚に対する依存性が増加した。これらのことから, 身体運動と連動した視覚・前庭感覚刺激の提示への長期順応によって, 姿勢制御のモダリティ依存性を変化させられることが示唆された。
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