2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図を用いた神経美学の研究-学習という観点からの検討-
Project/Area Number |
19730465
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻井 岳雄 Keio University, 社会学研究科, 准教授 (80424216)
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Keywords | 神経美学 / 学習 / 脳磁図 / 形成運動空間 / 鑑識眼 |
Research Abstract |
人はどのような絵や図形を美しいと感じるか, 美しいと感じた時に脳はどのような活動を見せるのか, その反応にはどのような法則があるのか. こうしたテーマを脳画像研究等の手法を用いて実験的に調べる分野を神経美学(neuroaesthetics)と呼び, 比較的新しい研究分野を形成しつつある。本研究の目的は, 絵画を見ているときの脳活動を主に脳磁図(magnetoencephalography)を用いて時系列的に調べることである。特に本研究では、学習という観点からこの問題を論じ、初心者と熟達者で絵の見方がどのように異なるのかを調べた。その結果、美術経験者と素人(普通の大学生)では、特に形成運動空間という観点で鑑識眼が異なることが明らかになった。また、普通の大学生に専門的な鑑識眼を身につけさせる長期訓練(6ヶ月)を行ったところ、ポストテストではプレテストに比ベて専門家の絵画鑑識のパターンとの相関が増加することが明らかになった。この傾向は、トレーニングで使用した絵画やプレテストで使用した絵画だけでなく、新奇な絵画にも般化することも明らかになった。脳磁図を用いた神経科学的研究では、絵画刺激の提示100ms後に後頭葉近辺で賦活が起きること、150-170ms近辺において側頭葉服側面で賦活が起きることなどが明らかになり、また肖像画、抽象画、風景画など絵画の種類に応じて異なる神経活動のパターンが見られた。しかし、絵画の専門家と初心者の間の脳磁図の反応には明確な違いは見られず、今後さらなる検討が必要とされる結果となった。
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