2007 Fiscal Year Annual Research Report
文脈的判断を可能にする前頭前野の神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
19730468
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
則武 厚 Tamagawa University, 脳科学研究所, 嘱託教員 (80407684)
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Keywords | 前頭前野 / 文脈判断 |
Research Abstract |
霊長類を始めとする高等哺乳類は,環境内の特定の刺激に対し文脈に応じて反応を変えることが出来る.この柔軟な判断機能は,前頭連合野の発達に伴い進化してきたと考えられており,前頭連合野の研究が盛んであるにも関わらずそのメカニズムは解明されていない.そこで本研究の目的は,刺激と刺激の関係を反応へと結びつけることを必要とする課題下における前頭前野の働きを調べ,柔軟な文脈的判断を可能にするメカニズムを明らかにすることである.具体的には,呈示した2つの視覚要素(動き・色)刺激を統合し,それらの要素とは異なる次元の反応(go・nogo反応)へと結びつけることを要求する課題をサルに学習させた.同時にその二つの刺激を呈示する条件(課題(1))に加え,刺激の出現する空間位置・タイミング・順序を操作した課題(課題(2)・(3))遂行中のサル前頭前野の神経活動を測定し,どのように2つの視覚情報が統合し意志決定や行動となるかを追うことにより,柔軟な文脈的判断を可能にするメカニズムの解明に迫ることが可能となる. H19年度は,ニホンザルに課題(1)を学習させ,その行動解析を行うと共に,課題遂行中のサル前頭前野の神経細胞からの単一細胞活動記録を行った.結果,前頭前野の背側と腹側における処理レベルの違いを見いだした.動き・色どちらの次元においても背・腹側と同様の処理を行っておりその処理速度はほぼ同じであったが,それらの情報を統合しgo・nogo反応という行動・意志決定を示している神経活動は背側で多く認められた.腹側よりもその表象は早い段階で形成されていた.このことは,刺激と刺激の関係を反応へと結びつける状況における前頭前野背側の重要性を示唆するものであり,文脈的判断を可能とする基礎的な神経メカニズムの一端となりうる.これらの結果をまとめ,日本神経学会および米国神経科学大会など国内外で報告した.
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