2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730474
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 裕 The Institute of Physical and Chemical Research, 言語発達研究チーム, 研究員 (80415174)
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Keywords | ピッチアクセント / 近赤外分光法(NIRS) / 言語発達 / 大脳半球左右機能差 / プロソディ |
Research Abstract |
本研究は、日本人乳児における語彙識別に寄与する韻律的特徴処理の発達過程を脳活動の左右側性化の面から解明することを目的とした研究であり、本年度においてピッチアクセント処理における左右側性化の発達的変化に関する研究が実施された。4ケ月および10ケ月齢の日本人乳児を対象に、高低及び低高ピッチパタンを有する単語並びに同様のピッチパタンを有する純音刺激を用い、そのピッチパタン弁別処理に伴う脳活動を近赤外分光法脳機能測定装置により測定した。その結果、10ケ月児群において、純音刺激におけるピッチパタン弁別では左右同程度の活動が示されたのに対し、単語刺激においては左の活動が右に比べて大きくなっていた。それに対して4ケ月児群では、単語と純音のどちらに対しても、ピッチパタンの弁別に対する脳活動が左右同程度であった。これらの結果は、1)10ケ月児においては、単語に含まれるピッチパタン変化と言語的な意味を持たないピッチパタン変化が、異なる脳内過程を経て処理される、2)ピッチアクセントに対する脳内処理過程が、生後4ケ月から10ケ月の問に発達的に変化する、ことを示している。従来、乳幼児の言語発達は主に行動実験手法により探索されてきたが、本研究では聴性言語処理の発達段階が脳機能測定により区分され得ることが示され、本研究は言語発達研究に脳機能測定が有効であることを示唆する意義をもつ。また、日本語の韻律的特徴処理の発達的変化を調べた研究は少なく、本研究はピッチアクセントを用いた点でこの分野に対して貢献し、かつ、10ケ月児の結果が日本人成人と同様の結果を示した点でピッチアクセントの獲得に関する重要な知見を提供した。
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