2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730474
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 裕 The Institute of Physical and Chemical Research, 言語発達研究チーム, 研究員 (80415174)
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Keywords | ピッチアクセント / 近赤外分光法(NIRS) / 言語発達 / 大脳半球左右機能差 / プロソディ / 長短母音 |
Research Abstract |
本研究は、日本人乳児における語彙識別に寄与する韻律的特徴処理の発達過程を脳活動の左右側性化の面から解明することを目的とした研究であり、本年度においては、長母音と短母音の弁別における乳児の左右側性化を調べた。10ヶ月齢の日本人乳児を対象に、短母音もしくは長母音を含む単語対(「まな」対「まーな」)と母音の質的変化を有する単語対(「まな」対「みな」)を刺激として用い、長短母音弁別及び母音の質的変化の弁別処理に伴う脳活動を近赤外分光法脳機能測定装置により測定した。その結果、母音の質的変化の弁別では、左優位の脳活動が示されたのに対し、長短母音弁別では左右同程度の活動が示された。これらの結果は、母音の質的変化に対する脳活動と長短母音の変化に,対する脳活動が、10ヶ月児では異なっていることを示している。母音の質的変化と長短母音変化は共に、日本語において語彙を識別する役割を担うが、日本語学習乳児においてそれらの獲得過程が異なることを脳機能測定により示した点で、本研究は言語発達研究に脳機能測定が有効であることを示唆する意義をもつ。また、昨年度には、10ヶ月児において、日本語のピッチアクセントパタンの弁別に対する脳活動が左優位であったことを報告している。本年度と今年度の結果から、ピッチアクセントと長短母音の脳内処理が、10ヶ月児では異なっていることが示唆される。このことは、韻律的特徴に含まれる音の高さ変化と長さ変化の知覚の発達過程が異なることを示しており、本研究は日本語の韻律的特徴の獲得に関する重要な知見を提供した。
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