2008 Fiscal Year Annual Research Report
高校総合学習と青年期の内面的成長との関わり-"卒業研究"の縦断調査の事例分析‐
Project/Area Number |
19730479
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
高橋 亜希子 Hokkaido University of Education, 教育学部, 准教授 (90431387)
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Keywords | 高等学校 / 総合学習 / 自己形成 / 思春期 / 青年期 |
Research Abstract |
1 高校総合学習と自己形成過程の関わりに関する解釈枠組みの生成 2008年度は事例分析の準備として、高校総合学習と自己形成過程の関わりに関する解釈枠組みの生成作業を行った。具体的には(1) 先行研究である「地域学習・課題学習論」「正統的周辺参加論」「シティズンシップ教育・政治的判断力の育成」「自己形成課題の意識化」の4つの観点の整理とそれぞれの特徴の紹介(2) 発達理論に照らした青年の認識・社会・自己との関わりについての特徴の整理(3) ヴィゴツキーを基とした解釈枠組の提示の3点の作業を行った。高校での総合学習は、認識形成、社会や他者との関わり、自己形成が相互作用しつつ行われる学習であることを明らかとし、人間の発達を外界との相互作用と内界の意味システムの変容と促えたヴェゴツキーの理論を総合学習過程の解釈に用いる可能性を示した。成果を『青年期の発達支援としての高校総合学習-認識・社会・自己の関わりに焦点を当てて-』(北海道教育大学紀要59巻第2号2009pp.169-182.)として発表した。 2 総合学習過程に関する事例の分析-学習過程と自己形成の関わりに焦点を当てて 2007年度に一人の生徒(Kさん)の卒業研究過程に対する継続的インタビュー(2001年から2003年 : 計8回)のテープおこしを行った。2008年度はその事例のプロトコルと総合学習の本文をもとに、他者との関わりの影響とKさんの存在様式の変化についてヴィゴツキーを参考に構成したモデルをもとに分析した。具体的には、高木(2001)の"接触"と"振動"の概念を用いて他者との出会いによりKさんの中に生じた意味を明らかとし、それがKさんの中で連鎖的に意味生成を導き、存在様式の変化に繋がっていく過程を分析した。 そして、ただ他者と関わることに意味があるのでなく1他者との接触によるペレジヴァーニエ(心的体験)の現れ2「最近接発達領域」の準備3Kさんの潜在的な求め(Inner referent) との呼応の重要性を示した。 事例分析を通し。学習過程と自己形成過程の相互作用を分析する解釈枠組みを提出し、高校生にとって総合学習が認識形成を通した自己形成の支援になるごとを示した。
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Research Products
(2 results)