2010 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける職業教育とシティズンシップ教育に関する歴史的研究
Project/Area Number |
19730485
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
三時 眞貴子 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (90335711)
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Keywords | イギリス / 教育史 / 職業教育 / 貧困児童 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、イギリス教育史に関する文献について、刊行資料の整理、収集を行った。 本研究の目的は都市の中で経済的、政治的、文化的に主導的役割を果たしていた都市エリートが、社会における責任と役割をどのように考えていたのか、市民たることを教える「シティズンシップ教育」が商人の「職業教育(教育機関での教育と徒弟修業)」の中でどのように位置づけられていたのかについて明らかにすることであった。本年度は昨年度に引き続き、都市エリートがチャリティあるいは社会的安定のために、自らの社会的責任として行った貧困児童への職業教育に注目し、その実態を明らかにした。救貧児童の中には教育をほとんど受けていない子どもが数多くいたとはいえ、彼らの教育の場は、多様に存在していた。それは貧困層の子どもを教化し、社会に適合させることが社会全体にとって有益であると考えられた結果であった。そのため救貧児童を公営基礎学校に進学させる教区連合が増加したが、職業教育が疎かになるという批判や一般家庭の保護者が難色を示すなど、そうスムーズには進まず、結局、公立基礎学校への進学は主流とはならなかった。 以上のような研究の結果を論文としてまとめ、『愛知教育大学研究報告』第60輯(教育科学編)に掲載した。 昨年からこの研究を進める中で、貧困児童の職業教育は単に都市エリートによる社会改良としてとらえるのではなく、子どもの福祉政策全体の中で位置づける必要性を感じていたため、本年度は「子どもの福祉と職業教育」に関心を持つ他の研究者との議論の場として、第二回「子どもの福祉と職業教育」研究会を2010年9月25日(土)に名古屋大学で開催した。
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