2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730487
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
岡部 美香 Kyoto University of Education, 教育学部, 准教授 (80294776)
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Keywords | 新教育 / 文化史 / 比較教育史 / 領有 / エレン・ケイ / 児童の世紀 |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭の新教育の思想を対象として、当時のさまざまな社会集団によるその領有の仕方について考察し、思想の読者(集団)が構成する社会構造や緊張関係、そして新教育の思想の社会的な布置を解明することを目的としている。この目的のもと、本年度は2つの具体的目標を達成するべく研究を進めた。 まず一つには、本研究の方法論の精査である。今年度は、文化史的アプローチの提唱者R. シャルチエが属するフランス・アナール学派の歴史学が有する教育学的意味について論稿をまとめた(「近代のメルクマールとしての<子ども>」)。また、フランスの社会科学高等研究所でシャルチエの講義録などの文献を入手するとともに、J.デリダとJ.=L.ナンシーの思想を援用して、思想の受容の歴史を考察する方法論について検討した。これについては21年度に論稿をまとめ発表する予定である。 次に、ドイツにおける新教育の思想の領有に関する考察を進めた。日本国内およびドイツの大学や研究所の図書館において関連文献を収集し、新教育の思想の先駆とされるE. ケイの著書『児童の世紀』がドイツの読者(集団)にどのように読まれたかを分析考察した。 なお、昨年度の課題であった日本における新教育の思想の領有に関する考察について、論稿をまとめ、その一部を発表した(「日本における学校教育の変遷」)。現在、日本とドイツとの比較教育史研究を、文化史的アプローチを中心とする上記の方法論によって進めているところである。
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