2009 Fiscal Year Annual Research Report
パフォーマティヴィティによる人間形成論に基づく道徳教育実践モデルの研究
Project/Area Number |
19730493
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
奥野 佐矢子 Shimonoseki City University, 経済学部, 准教授 (40433388)
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Keywords | 教育学 / 道徳教育 / 人間形成 / パフォーマティヴィティ |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、これまでの研究成果をふまえ、パフォーマティヴィティ概念を鍵概念として道徳性実践モデルを再定式化した。 通常、「心」や「感情」など人間の内面に関わるものは、その存在が自明視され、道徳教育においてもそれへの働きかけこそが教育的な作用であると考えられがちである。だが本研究では、そのように自明視されている内面としての「心」や「感情」そのもの瓜言語のパフォーマティヴな力を伴う慣習的反復により構築されるものと捉える。初年度は、言語が外的に規範的な力を及ぼすと同時に、反復する主体内にもその規範性が内面化されていく道徳性形成のメカニズムを明らかにした。次年度ではこの道徳性形成モデルを手がかりに、道徳教育諸実践に関する資料収集・分析をおこなった結果、道徳教育実践論として近年とりわけ注目されている「道徳と情動(emotion)」に特化したアプローチは、本研究において提示した道徳性形成モデルによって、より十全に分析可能であることが明らかとなった。 これらの研究成果をふまえ本年度は、この「道徳と情動」に特化した道徳教育実践モデルの中にあって、実践性と有効性において高い評価を得ているあるプログラムに着目した。そして、そのプログラムの理論的基盤を、言語のパフォーマティヴィティという観点から再定式化した。その結果、「情動の教育」の実践の内実は、実は発話など言語的なものを通じて遂行されていることが明らかとなった。このことにより、言語のパフォーマティヴな力に着目した道徳性形成モデルに基づき、あるひとつの道徳教育実践モデルの有用性が示された。 研究成果としては、中国四国教育学会第61回大会における口頭発表「パフォーマティヴィティによる道徳教育実践モデルの検討」(2009年11月)、そして「言語のパフォーマティヴィティ概念にもとづく道徳教育実践モデルの検討-セカンドステッププログラムを中心に-」(『教育学研究紀要第55巻』中国四国教育学会、2009年、82-87頁)がある。
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