2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代イギリスの信仰学校についての研究 - 公教育における私事性と公共性の観点から
Project/Area Number |
19730499
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 研作 Waseda University, 総合科学学術院, 助手 (20434251)
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Keywords | イギリス / 信仰学校(faith school) / 公教育制度 / 教育の公共性と私事性 / 学校の多様化 / 新自由主義的教育政策 / 教育行政 / 学校設置 |
Research Abstract |
研究目的 新自由主義的教育改革が進むイギリスの公教育制度において私事性と公共性の問題がどのように議論されているかを、信仰学校(二宗教系学校)に着目して明らかにすることが本研究の目的である。 研究方法 1. 文献調査・研究 : 信仰学校に関する政策文書ならびに研究論文を収集し検討を行った。特に、特定宗派の利益を代表する信仰学校が公費による維持を認められるプロセス(=学校設置)に関わる問題を検討した。 2. 信仰学校の実態調査 : 信仰学校ではどのような教育を行っているのか、また信仰学校の教職員はどのような意識でその学校での教育に携わっているのかを知るために訪問調査を行った。リーズ市にある英国国教会中等学校、サリー州にあるカトリック中等学校、ロンドン・ワンズワース区にあるカトリック中等学校を訪問し、校長、教頭、宗教教育担当教員へのインタビューならびに宗教教育の授業見学を実施した。 3. 信仰学校への見解についての調査 : 信仰学校が公費で維持されることに対してはさまざまな議論がある。教育関係者の信仰学校に対する見解を知るために、大学教員、教育行政機関職員、非宗教系学校教員などへのインタビュー調査を実施した。 研究成果 この研究により次の3点を明らかにすることで、イギリスにおける教育の公共性議論の一端を明らかにできた。第一に、イギリス社会において信仰学校は教育の私事性を拡大する存在として認識されていること。第二に、しかしながら、信仰学校の設置が認められている背景には、教育効果やニーズや社会的一体性などの複数要因を総合的に判断して公教育制度をよりよいものにしようとする教育行政機関の考えが反映されていること。第三に、今後の信仰学校の課題としては、各宗教団体の利害を超えた教育供給主体としての責任、すなわち教育の公共性への関与が積極的に求められていること。
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Research Products
(3 results)