Research Abstract |
本研究の目的は, 子どもが文化的実践としての数量活動に参加することを通して, より高度な数量能力を発達させる過程を解明することである。本研究では特に, 文化的実践としての保育活動に注目し, 日本の保育実践に特徴的にみられる保育者の促進的支援との関連で幼児の数量概念の発達を捉える。 平成20年度は, 平成19年度に得られた研究成果を発展させ, 次の2点を行った。第1に, 保育者を対象に実施した幼児の数量発達と支援に関する面接・質問紙データの分析を進め, 幼児の数量発達に対する保育者の信念と数量支援の関係について検討した。第2に, 申請者が幼稚園年長(5歳児)クラスにおいて実施した保育活動の自然観察記録を詳細に分析し, 幼児の数量発達に対する保育者の具体的な支援の方法について検討した。ここから日本の保育者は, 自分が主導する保育活動において, (1)3, 4歳児だけでなく(Sakakibara, 2008), 就学を控えた5歳児に対しても体系だった数量指導を行っていないこと, (2)保育者の数量支援は, 日常の保育活動に数量の要素を埋め込む形で, 特に「製作」「出欠の確認」「ゲーム」「歌」の活動において頻繁に行われていること, (3)数量要素の種類別では「数」に関わる活動が頻繁に行われており, 「パターン」に関係した活動は殆ど行われていないことが明らかになった。保育者の数量支援としては, 例えば, 出欠を確認する活動において幼児に一連の質問を投げかけることによって, 幼児がクラスの在籍人数から欠席児の人数を引いて出席児の人数を算出することを促したり, ゲームの活動において, 幼児の数量への関与を促すゲームを選択する(例えばビンゴゲーム, サイコロを用いるボードゲーム, カルタなど)ことなどが観察された。
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