2009 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリアにおける全国学力調査と教育基準-統一性と多様性を視点として-
Project/Area Number |
19730524
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
伊井 義人 Fuji Women's University, 人間生活学部, 准教授 (10326605)
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Keywords | 全国学力調査 / オーストラリア先住民 / トレス海峡島嶼地域 / 社会的公正 / 教育成果 / ベンチマーク / 比較教育学 |
Research Abstract |
今年度は、本研究計画の最終年である。そこで、オーストラリアの全国学力調査に関する基礎的な調査・研究を継続するとともに、先住民教育における学力観を視点として、キャンベラとアデレードで現地調査を実施した。 そこでは第一に、連邦教育担当省や教育担当大臣協議会の資料を通して、新全国学力調査が導入され、実施に至る背景と同時に実施後の課題を分析した。また、現地調査中(2010年3月)に、オーストラリア初の全国統一のカリキュラムが作成された。それらと全国学力調査の関連性および先住民生徒への支援方法に関する調査を併せて実施した。 第二にキャンベラではオーストラリア国立大学、国立図書館、先住民研究所、アデレードでは南オーストラリア大学、アデレード大学を訪問し、60年代後半から2000年代までの「先住民と学力」の関連性を知る上での資料収集を実施した。 さらに、第二の点を補足するために、第三に80~90年代にかけて、先住民教育政策を策定する際に中核的な役割を担ってきた先住民指導者にインタビュー調査を行った。これらの調査から、これまで歴史的に先住民が習得するべき学力を、公教育機関が、どのように捉えてきたのかを明らかにした。 今年度は、最終年度のため、学力調査の現状を、過去二年間よりも俯瞰的に分析した。つまり、先住民や非先住民に対する学校教育が有する学力観だけではなく、社会的公正理念の「現在と過去」との比較分析を、全国学力調査と照らし合わせながら行った。全国的に要求される統一的かつ最低限の学力の範囲が明確にされたことこそが、2008年からの学力調査の意義であったといえる。そして、その統一性を一層、推進するために、今後、全国カリキュラムが実施される。それらの今後の状況を、学力および社会的公正の観点から注視していきたい。
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