Research Abstract |
当該年度は主に3つの視点から,先端テクノロジーの科学原理を組み込んだ科学教育カリキュラムの実態と構成原理の一端を明らかにした。 1つめは,日本の中等科学教育カリキュラムの実態を明らかにするため,中学校・高等学校間の先端テクノロジーに関する教材の接続関係に注目した。1950年代に発行された中学校理科および高等学校化学の教科書および教師用指導書の記述内容を分析して,当時の先端テクノロジーの結集であった,冶金,窯業および繊維工業に関する教材を調べた。その結果,中学校理科教科書には体験活動を重視したものが多く,高等学校化学教科書には先端テクノロジーそのものの理解の深化と研究発表能力の育成をねらいとしていた事実が明らかになった。 2つめは,近年の日本の科学教育界で行われている「工場見学」が,第一次世界大戦後でも奨励されていた事実から,当時の奨励が何をねらいにしたものであり,いかなる制約を有していたのかを明らかにすることで,日本の科学教育カリキュラムの特質の一端を明らかにできると考え,科学教育関係者が工場見学のねらいと制約をどのように語っていたのか,地方教育雑誌55種の記事内容を分析した。 3つめは,海外における先端テクノロジーの科学原理を組み込んだ科学教育カリキュラムの構成原理を明らかにするため,アメリカとイギリスの定評ある中等化学教科書を分析した。その結果,2つの中等化学教科書における"Industry"教材には,筋書き(シナリオ,ストーリーライン)を重視する共通点があった。また,問題解決能力の育成,環境問題への対処,さらには,キャリア教育の視点なども盛り込まれていた。これらの強調点は,新高等学校学習指導要領理科編の目指すところと合致する点も多く,科学教育カリキュラム構成を考えるうえで参考になる点が多い。
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