2007 Fiscal Year Annual Research Report
特別支援教育におけるインクルーシブ・カリキュラム開発のための歴史的研究
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19730554
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
米田 宏樹 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (50292462)
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Keywords | 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / カリキュラム開発 / 知的障害教育 / 経験主義 / 社会生活能力 / 教科課程 / 教科外課程 |
Research Abstract |
本年度は、米国における知的障害教育史に関する資料の収集・実地調査、日本における知的璋害教育史に関する資料の所蔵調査・整理作業を行った。所蔵確認・整理を行なった史資料については、筑波大学障害科学系への移送・保管が実現し、来年度以降に整理・分類作業が実施される予定である。収集された資料を概観し、日米における知的障害教育における目的・目標・教育内容・教育方法に関するデッサンを行なった。知的障害者は知的機能の「限定的発達」があることを前提に、文宇・教科書による間接経験教授を中心とする通常教育のカリキュラムに替えて、生活カリキュラムあるいは経験カリキュラムが適用された。知的障害児の成長や能力獲得の評価は、「社会生活能力」を指標とし、社会生活能力の形成そのものが目的とされた。知的障害教育においては、具体的生活経験そのものを指導内容に設定し,領域や教科には分けられない指導として取り組まれてきた。戦前・戦後をとおして、知的障害教育(通常学校内の特別学級・特殊学級)では、知的教科(国語,算数,理科,社会)よりも技能的教科(図工・音楽・体育)の時間を増やし、教科指導よりも生活指導を中心とした総合的な学習を行うことが重要規されてきた。学校教育が、「教科教育を中心とする認識能力の形成機能」(教科課程〉と「価値観や道徳性、社会性の発達の育成機能」(道徳・特別活動などの教科外課程)の大きく2つの機能を有するとすれば、知的障害児の学校教育実践は、「育成機能」を重視して展開してきたといえる。これは、教科課程と教科外課程の比重が、通常学校教育と知的障害教育とで、実態として異なってくるという結果を生じさせると同時に、日本においては、「知的障害教科」という独自の教科設定を生じさせる結果にもなっていると考えられる。
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