2010 Fiscal Year Annual Research Report
特別支援教育におけるインクルーシブ・カリキュラム開発のための歴史的研究
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19730554
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
米田 宏樹 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (50292462)
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Keywords | 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / カリキュラム開発 / 知的障害教育 / 経験主義 / 社会生活能力 / 教科課程 / 教科外課程 |
Research Abstract |
本年度は以下の1及び2について検討し、3の総括を行った。1.昭和37年度版学習指導要領(精神薄弱)と通常教育のそれとを比較することで、障害児教育のカリキュラムの展開について考察した。「精神薄弱」教科が、おおむね通常教育の小学校第2・3学年までに相当する各教科の内容項目を含みつつ、生活年齢に応じた生活に即した内容項目が重視されていたこと、通常教育の教科外課程の内容をその教科内容としていたことが明らかになった。2.米国における改正初等中等教育法(NCLB法)制定前後の議論や実際的対応を分析し、教育水準にもとづくカリキュラム導入の課題について考察した。障害児の教育水準に基づくカリキュラムと評価への参加が規定された背景には、全体的学力向上を目指した通常教育改革の側面と、障害児に健常児と同じ水準の同じ内容の学習機会を付与することでインクルーシブ教育を実現しようとする側面とがあると考えられた。一方、知的障害児の教育では、従来からその特性に応じた機能的生活スキルの習得を目指す独自のカリキュラムが実践されてきており、その教育内容は、児童生徒の実生活に直接繋がる知識やスキルであることが明らかとなった。連邦法では、通常の教育内容を学ぶことが困難な知的障害児に対しても水準に基づいた教育評価を義務付けているが、一定の水準に基づいた教育内容の設定・評価は、彼らに必要な生活スキルの習得機会を減少させる可能性があることを懸念する指摘も見られた。3.特別支援教育におけるインクルーシブ・カリキュラム開発には、学習特性に配慮した教科学習の方法・内容の設定とともに、教科の範疇に収まらない内容が教科外学習の内容として明示されることが不可欠であり、発達年齢上の課題と生活年齢上の課題の両方を達成するための教育内容の組織化が意図される必要がある。
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