Research Abstract |
スペクトルを保存する写像の構造について,次の結果を得た.まず関数環の間の二変数単項式のperipheralスペクトル保存写像の形を,その値域が十分な峰関数を含むときに決定した.特に二変数単項式の次数の最大公約数が1であれば,そのような写像はBanach環としての等距離同型写像,つまり荷重合成作用素に拡張されることも示した.さらに単位元の存在を仮定しなくとも,そのような関数環の間のperipheralスペクトル保存写像はBanach空間としての等距離同型写像となることを示した.これは本研究を発展させたLuttman and Tonevの結果の拡張となっている.もしも,それらの環がある種の近似単位元を有すれば,それらはBanach環として等距離同型であることも示した.一方で近似単位元の存在を仮定しないとき,Banach空間としては同型であるにも関わらず,Banach環としては同型でないような例を具体的に構成した.近年,非可換Banach環上のスペクトル保存写像の研究が活発になされているが,単一の写像ではなく,積のスペクトルを保存する写像の組を考えることにより,これまで独立に研究されてきた対号構造を考慮したスペクトル保存写像の研究を統一的に扱う手法を導入した.この研究論文以降,これまでの研究結果の本質がさらに鮮明になってきている.また摂動の定性の研究においては,乗法的汎関数のHyers-Ulam-Rassiasの意味での安定性を示すとともに,その写像が近似的環準同型写像であれば,それは真の環準同型写像であるか,または近似的零写像であることを示した.さらに積を一般化し,ある種の二項演算に対して同様の超安定性問題を考察し,その十分条件を与えるとともに,安定性に関する最良定数を決定した.
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