2008 Fiscal Year Annual Research Report
時間遅れをもつ方程式の解の大域的性質とスペクトル解析
Project/Area Number |
19740071
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松永 秀章 Osaka Prefecture University, 工学研究科, 講師 (40332960)
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Keywords | 時間遅れ / 微分方程式 / 差分方程式 / 漸近安定性 / 安定領域 / 特性方程式 / 特性根 / 相空間 |
Research Abstract |
本研究では時間遅れをもつ方程式の解の大域的性質とスペクトル解析に関する研究を行った。具体的な研究テーマは次の2つに分けられる : 1. 無限の時間遅れをもつ関数微分方程式系の解の漸近同値性 2. 特定の項にのみ時間遅れをもつ線形微分方程式系の零解の漸近安定性 本年度の研究成果は以下の通りである : (1) 無限の時間遅れをもつ関数微分方程式系の解の漸近挙動を考察し、常微分方程式のペロン型の定理に対応する結果を拡張した。関数微分方程式系に付随する作用素のスペクトル解析を用いて、不安定部分空間の成分が安定部分空間の成分よりも優位であることを証明し、さらに不安定部分を解析することにより解全体の漸近挙動を特徴付けることができた。 (2) 特性方程式の根の解析により、1つの時間遅れと2つの定数係数をもつ2次元線形微分方程式系に対して、時間遅れに依存する漸近安定条件と時間遅れに依存しない漸近安定条件を導出し、従来見逃されていた零解の漸近安定性における時間遅れの影響を完全に解明した。 (3) 非対角成分に時間遅れをもつ線形微分方程式系に対して、時間遅れに依存する漸近安定条件と時間遅れに依存しない漸近安定条件を導出し、時間遅れの影響を無視した従来の結果を本質的に改善した。また、得られた結果をn次元方程式系へ拡張することもできた。 (4) ある線形微分方程式系の対角成分の時間遅れを増加させると、零解が漸近安定と不安定とくり返しながら、最終的に不安定になる性質(Stability switches)を数学的に完全に証明した。
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