2010 Fiscal Year Annual Research Report
複素領域における特異1階偏微分方程式に対するジュブレイ理論
Project/Area Number |
19740078
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
日比野 正樹 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (10441461)
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Keywords | 関数方程式論 / 複素解析 / 発散級数 / 関数空間論 / 縮小写像 |
Research Abstract |
前年度と本年度は、複素領域における、原点を特異点とする一般の1階非線型偏微分方程式に対して、その形式解が一意に存在するための条件を求めること、さらに形式解が発散する場合は、その発散の大きさを表すジュブレイ度の値も精密に求めること、を目標に研究を続けて参りました。 研究対象の方程式は、その線型主要部のなすベクトル場のヤコビ行列の固有値の値に応じて、(i)どの固有値も零でない;(ii)固有値が全て零;(iii)零でない固有値と零固有値が混在する;の3タイプに分けることが出来ます。タイプ(i)の方程式に対する研究は前年度に完結したため、今年度は当初タイプ(ii)の方程式に対する結果を得ることを目標に研究を進めました。そしてまず「方程式の係数の零点の位数が或る一定の数値以上であり、かつ"非共鳴条件"と呼ばれる条件を方程式が満たせば、形式解は一意に存在する」という結果の証明に成功しました。 一般に上記の形式解は発散するため、そのジュブレイ度を求めることが漸近展開の研究を進めていく上で重要となるのですが、時間の都合上、その研究は断念しました。しかしながら形式解の一意存在条件については、(i)(ii)のタイプの方程式に対する研究成果を応用することにより、当初予定していなかったタイプ(iii)の方程式に対しても求められる見通しが立ちました。そこで研究計画を一部変更してタイプ(iii)の方程式を扱い、「タイプ(ii)の方程式に課した条件に加え、さらに上記の零でない固有値が"ポアンカレ条件"を満たせば、形式解は一意に存在する」という結果の証明に成功しました。 いまだ形式解のジュブレイ度の予想及びその証明という課題が残されており、研究成果としては不十分(それゆえ成果発表はまだしておりません)ですが、形式解の一意存在条件を求めるという一つの目標に関しては、全てのタイプの方程式に対して達成することが出来ました。
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