2008 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期のダストの物理化学進化とその観測および天体形成史に及ぼす効果の解明
Project/Area Number |
19740094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野沢 貴也 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (90435975)
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Keywords | ダスト(星間塵) / 超新星爆発 / 超新星残骸 / 質量放出 / 物質進化 / 可視光赤外線観測 |
Research Abstract |
爆発後およそ60日という異例に早い時期にダストの形成が確認された特異なIb型超新星2006jcの「すばる」「MAGNUM」「かなた」望遠鏡による可視光観測、赤外線天文衛星「AKARI」の近 : 中赤外線観測結果を基に、超新星2006jcの親星の素性や爆発の性質、形成されたダストの起源や組成を解明する研究を行った。 超新星2006jcは先行観測からすでに、正.爆発前の進化段階で水素外層を失っていた、2.爆発時のエネルギーが通常の超新星より一桁大きい、ことが示峻されており、それゆえまず対応する超新星モデルに対してダスト形成計算を実行した。その結果、爆発後およそ50日に、爆発によって放出された物質中で実際にダストが形成すること、また形成するダストのサイズは0.01ミクロン以下と比較的小さいことを明らかにした。 さらに、「AKARI」による爆発の約200日後の観測結果との比較を通じて、形成されたダストの種類、質量や温度について検討し、爆発時に形成された主なダストは炭素質であること、新しく形成したダストに加えて、親星の進化末期の星風中で凝縮したより低温のダストが超新星周囲に存在することもわかった。また、星の進化理論モデルとの比較から、超新星2006jcは太陽の40倍以上の質量の星が、一生の間に度重なる質量放出活動を経て超新星爆発に至ったことを明らかにした。 これらの研究結果は、1. 超新星爆発時の水素層の厚さによって、形成するダストの凝縮日数やサイズは大きく影響される、2. ダストの形成および星周ダストの存在・組成が、親星の質量だけでなく親星の進化史にも重要な制限を与えることができる、3. これらの研究の成果は、日本の最先端の観測機器と理論モデルのコラボレーションにより実現された、などの大きな意義と重要性をもつ。
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