2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期のダストの物理化学進化とその観測および天体形成史に及ぼす効果の解明
Project/Area Number |
19740094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野沢 貴也 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (90435975)
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Keywords | ダスト(星間塵) / 超新星爆発 / 超新星残骸 / 可視光赤外線観測 / 星間衝撃波 / 物質進化 / 質量放出 |
Research Abstract |
赤外天文衛星AKARIによって観測された超新星残骸G292.0+1.8の赤外スペクトルエネルギー分布と超新星衝撃波により加熱されたダストからの熱放射スペクトルの計算結果との比較から、G292.0+1.8の星周空間に存在するダスト種はシリケイト質で、星周ガスは水素原子密度で0.5/ccに対応する密度を持つことを明らかにした。本研究により、衝撃波によるダストの破壊・加熱・熱放射計算と赤外観測結果との比較は、星周密度構造や超新星親星の質量放出活動を探る有用なプローブになることを示す。 また、重力崩壊型超新星のうち、その進化段階で外層の水素をほとんど失ったIIb型超新星爆発でのダスト形成計算と、その後の超新星残骸中でのダストの進化計算を行った。計算の結果、IIb型超新星で形成されるダストの平均半径は0.01μm以下で、外層を失っていないII-P型超新星のものと比べて一桁程度小さく、それゆえ形成されたダストは星間空間に放出されず、衝撃波に掃かれた高温のガス中で破壊されることがわかった。これより、超新星爆発時のダスト形成過程は超新星のタイプ(外層の厚さ)に影響されること、またIIb型超新星は星間ダストの主な供給源として寄与しないことを明らかにした。さらに、これらのダストの形成・破壊計算を基に導出したダスト熱放射スペクトルは、その爆発がIIb型と同定されたCassiopeia A超新星残骸の赤外スペクトルを矛盾なく再現できることを示した。 これらの研究は、星間ダストの供給源としての超新星の役割に重要な示唆を与えるだけでなく、超新星衝撃波によるダストの破壊・加熱の基礎物理過程の理解に大きな飛躍をもたらす。
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Research Products
(8 results)