2009 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域X線スペクトル観測によるブラックホール降着流のエネルギー解放バランスの解明
Project/Area Number |
19740113
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保田 あや Shibaura Institute of Technology, システム理工学部, 准教授 (00391938)
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Keywords | X線天文 / ブラックホール / 降着円盤 / モデル計算 / 質量降着 / 質量放出 / 「すざく」衛星 |
Research Abstract |
ブラックホール(BH)は物質を降着する過程で重力エネルギーの解放により、X線ガンマ線として大量のエネルギーを宇宙空間に放出する。特に、質量降着率の高いhighおよびvery highという状態では、光学的に厚い降着円盤が形成され効率的な放射が行われるとともに、円盤風としての質量放出がエネルギー解放に重要な役割を担うことが明らかになってきた。本研究は、「すざく」衛星によるBHの広帯域X線ガンマ線スペクトル観測を行い、放射と質量放出によるエネルギー解放バランスを明らかにすることを目指している。今年度は、まず第一に、「すざく」で観測した、GX339-4というBH天体のvery high状態の広帯域スペクトルから、円盤からの熱的放射と円盤を取り巻く熱的コロナという描像でスペクトルを理解できた(Yamada et al.2009)。さらに、前年度にPIとして「すざく」で観測を行ったBH天体LMC X-3のhigh状態の詳細な解析を行い、この天体が典型的なhigh状態であるにも関わらず、円盤風由来と考えられる吸収線が検出されないことを示し、円盤風形成が単に質量降着率によって決まるものではないことを定量的に示した。また、円盤内部構造の詳細な理論計算を行い、得られたスペクトルから降着円盤の内部構造を精査し他結果、理論的に考えられる吸収端構造が観測データには全く存在しないことをはじめて示した (Kubota et al.2010)。これは現在我々が標準的に用いている標準降着円盤の理解においてなんらかの考え落としがあることを示しており、降着によるエネルギー解放を探る上で重要な知見を得たといえる。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Is the Black Hole in GX 339-4 Really Spinning Rapidly?2009
Author(s)
Yamada, S、Makishima, K., Uehara, Y., Nakazawa, K., Takahashi, H., Dotani, T., Ueda, Y., Ebisawa, K., Kubota, A., Gandhi, P.
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Journal Title
The Astrophysical Journal Letters 707
Pages: L109-L113
Peer Reviewed
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