2009 Fiscal Year Annual Research Report
汎用ニュートリノ核子散乱シミュレーションプログラムの研究開発
Project/Area Number |
19740127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早戸 良成 The University of Tokyo, 宇宙線研究所, 准教授 (60321535)
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Keywords | ニュートリノ / ν核子散乱 / シミュレーション |
Research Abstract |
2009年度は、まず既存のπ粒子-原子核散乱実験のデータやガンマによるπ粒子生成について、新たなデータの探索を行い、これらと現在のシミュレーションの一致について調べた。低運動量(約500MeV/c以下)については、現状のパラメータの一つを30%修正することで、酸素や炭素などの軽い原子核について、実験データとの一致が一番よくなることがわかってきた。また、これより上の運動量領域については、新たな修正を考慮に入れ、より連続的に接続できるパラメータをとることとし、全体の整合性が保てるようにした。また、これらの修正による影響は、これまでの解析などで用いていた系統誤差の範囲内に収まっていることも確認することができた。また、今年度はπ粒子が原子核に吸収された場合に、核子が放出される過程について、π原子核散乱実験の専門家と協力してシミュレーションに試験的に導入した。この反応過程によって放出される粒子は、水チェレンコフ型検出器では観測されないことや、高運動量の粒子のみに着目する解析を行う場合にはあまり影響がないことからシミュレーションをおこなっていなかったが、SciBooNE実験において事象を詳細に調べてゆくと、本過程によると考えられる信号が観測されたため、考慮することとした。シミュレーションプログラムへの実装は完了し、今後この解釈・モデルが実験結果と一致するか、違いがあるのかなどをSciBooNE実験やT2K実験のデータを用いて確認してゆくことが可能となった。ニュートリノ散乱実験データとシミュレーションプログラムの直接比較としては、SciBooNE実験のデータを用いた中性π粒子生成についての解析がある。この結果、中性π粒子の運動量分布や角度分布が現在のシミュレーション結果でよく再現できることがわかった。
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