2007 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的重イオン衝突反応におけるクォークグルーオンプラズマの非平衡過程
Project/Area Number |
19740130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 哲文 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 講師 (40318803)
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Keywords | 理論核物理 / 重イオン衝突 / クォーク・グルーオン・プラズマ / 相対論的流体力学 |
Research Abstract |
本研究は、全く新しい極限状態の物質「クォーク・グルーオン・プラザマ(QGP)」の性質を、非平衡過程を通して理解することを目的としている。本年度は、相対論的粘性流体力学についての情報収集を主に行った。また、重イオン衝突反応の時間発展を念頭に、散逸項を含んだ相対論的流体方程式を熱力学量が衝突軸方向のローレンツ変換不変性を持つような簡単な系(Bjorkenのスケーリング解)に適用し、解の振る舞いを調べた。最終的に得られるエントロピー生成量は、系の初期条件に敏感に依存することが分かり、今まで以上に、重イオン衝突反応の初期状態を詳細に調べる必要があることが分かった。現在は、この解析結果を衝突軸方向に熱力学量がローレンツ不変性を持たないより現実的な系に適用することを試みている。 また、粘性の効果を有効的に取り入れることができるBoltzmann方程式を、ハドロン多体系の時空発展に適用し、一方、クォークとグルーオンの多体系には依然として、完全流体を仮定した模型を構築した。この模型を用いて、相対論的重イオン衝突実験のうち、系の流体力学的な様相と密接に関連のあるデータを系統的に解析し、ハドロン多体系の粘性の効果を詳細に調べた。粘性は、ハドロン間の相互作用の強さに応じて、測定される粒子毎に異なる影響を与える。特に、他のハドロンと相互作用をあまり起こさないと考えられているφ中間子に注目し、粒子の質量順に整列化する楕円的な運動量異方性が、φ中間子の場合、この順序が破れることを予言した。更に、この破れから、クォーク・グルーオン・プラズマ中における流体力学的な性質を直接引き出すことができる可能性を指摘した。
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Research Products
(11 results)