2009 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的重イオン衝突反応におけるクォークグルーオンプラズマの非平衡過程
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19740130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 哲文 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 講師 (40318803)
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Keywords | 理論核物理 / 重イオン衝突 / クォークグルーオンプラズマ / 相対論的流体力学 |
Research Abstract |
本研究は、我々の初期宇宙を満たしていた原始物質「クォークグルーオンプラズマ(QGP)」の物理的な性質を相対論的重イオン衝突における非平衡過程を通して理解することを目的としている。 本年度は、研究の最終的な目標である相対論的粘性流体方程式の数値的解法に向けて、多成分系、かつ、多保存流が存在する場合の粘性の影響も含んだ相対論的流体方程式の導出を試みた。非平衡過程である粘性の影響は、素朴な相対論的拡張をすると因果律を破る、不安定性を引き起こすことが知られている。そのため、粘性量に対する緩和過程を取り入れる必要がある。そのため、数値解法を目指す前に相対論的粘性流体力学の定式化自身を行う必要があった。そこで、具体的にはGradのモーメント法を拡張し、Onsagerの相反定理を満たすような非常に一般的な構成方程式を導いた。また、体粘性が横運動量スペクトルや楕円型フロー係数といった観測量に及ぼす影響の定量的評価も行った。 さらに、ハドロン相の粘性を運動学的に取り入れた流体-カスケード複合模型を用いて、衝突初期の系の形の揺らぎが物理量に与える影響を調べた。 また、流体から直接放出される熱光子の解析を行った。光子はハドロンと異なり、強い相互作用をせずに、一旦放出されれば検出器によって直接測定されるためクリーンなプローブとされている。本件急では特に楕円型フローの横運動量依存性が、ハドロンでは得られない系の内部の情報を担っていることを見出した。
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