2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740149
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Research Institution | Daido Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉田 浩見 大同大学, 教養部, 准教授 (80367648)
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Keywords | ブラックホール熱力学 / 量子重力 / エントロピー=面積則 / 熱力学 / 量子統計力学 |
Research Abstract |
本研究ではブラックホール(BH)を構成する重力のミクロ状態が従う統計性(統計力学)を明らかにしたい。そのためにBHを熱力学系とみなした場合の状態方程式を精密に確立する必要がある。その状態方程式を再現する統計性を探ることで重力のミクロ状態の統計性を研究できる。 これに関して従来、宇宙にBHが一つだけある時空で、BHエントロピーが事象の地平面の面積の1/4倍に等しいという状態方程式(エントロピー=面積則)が得られていた。その延長で、宇宙に事象の地平面が複数あっても、それぞれの地平面に対してエントロピー=面積則が成立しているだろうと、ほとんどの研究者が考えてきた。しかし本研究では、地平面が2つある場合でBHエントロピーを見積もると、エントロピー=面積則が破れていることを発見した。さらにこの結果は、事象の地平面が複数共存する系を必ずしも熱平衡状態とはみなせないことも意味する。 以上の研究から、エントロピー=面積則を通して重力のミクロ状態を研究するには、BH一つが単独で存在する系を考えなければならない、と分かる。そこで、一つのBHが熱浴の中に置かれて熱平衡状態になっている場合を考えて、この熱平衡系が存在するために必要な「重力のミクロ状態が満たすべき条件」の研究を始めた。参考にしたのは、通常の実験室系での量子統計力学の成立条件である。通常の量子系のどんな性質によって熱平衡状態が実現できる(量子統計力学で記述される)のか?これを調べるのにそれなりの時間がかかったが、幸いに素晴らしい参考文献を見つけたことで、答えを得た:「ミクロ状態の間の相互作用ポテンシャルは下に有界でなければならない」。これは、古典論で得られている重力ポテンシャルの理解「粒子の位置で負の無限大に発散」とは合わず、重力の量子効果(少なくともミクロ状態の統計性)の結果として重力ポテンシャルに重要な変更(下限の発生)が必要なことを意味する。また、量子重力のモデルに依存しない非常に普遍的すな性質だという点でも重要である。(現在論文を執筆中)
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Research Products
(25 results)