2007 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル対称性を持つ2+1フレイバーの動的格子QCDとフレイバー物理への応用
Project/Area Number |
19740160
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 High Energy Accelerator Research Organization, 計算科学センター, 助教 (10373185)
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Keywords | 格子QCD / フレイバー物理 / カイラル対称性 |
Research Abstract |
本年度は、2+1フレイバーの動的クォーク効果を含むケージ場の配位を生成し、今後のフレイバー物理に関係したハドロン行列要素の計算のための準備を主に行った。 シミュレーションを行うためのコードは、すでに動作するものが開発済みであったので、これを用いてゲージ場配位の生成を開始した。空間方向のサイズ16の格子について現在までにほぼ生成を終了し、物理的な観測量の測定に進みつつある。また同時に、シミュレーション速度の向上のためのアルゴリズムの改良を行った。これは4次元空間の演算子を5次元に拡張する方法において、これまで難しかった低い固有値部分の取り扱いを可能にしたことで、最も時間のかかるオーバーラップ演算子の線形解法について数倍の速度向上を達成し、生成プログラム全体でも約2倍の速度向上を得た。このアルゴリズムを上記のゲージ場配位の生成にも使用し、迅速な研究の進展に役立てた。 生成された格子の上では静的ポテンシャルの計算を行い、格子間隔の決定を行っている。これらにより、フレイバー物理のためのハドロン行列要素を計算する準備が整いつつある。また、物理量を精度よく決定するには、格子サイズを24に大きくした計算が不可欠であり、そのための準備的研究も行った。 b-クォークのような重いクォークを格子上で扱うための有効理論についても研究を行った。この方法ではクォーク質量無限大の極限を考え、そこからのずれを補正として取り入れる。我々は質量無限大の極限において、現象論的に重要な、ベクトルBメソンがBメソンとパイオンに結合する際の結合定数の高精度計算を行った。今年度は他のグループが生成した格子を用いて方法論の確認を行い、その結果十分な精度が達成可能であることを確認した。今後本研究で生成したゲージ場配位でも計算を行う予定である。
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