2008 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル対称性を持つ2+1フレイバーの動的格子QCDとフレイバー物理への応用
Project/Area Number |
19740160
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 High Energy Accelerator Research Organization, 計算科学センター, 助教 (10373185)
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Keywords | 格子QCD / フレイバー物理 / カイラル対称性 |
Research Abstract |
本年度は2+1フレイバーの動的クォーク効果を含む格子QCDのシミュレーションを、主に16^3×48という格子サイズで行った。昨年度に開始したトポロジカルチャージゼロでのゲージ場の配位の生成を完了し、スケール(格子間隔)の決定やハドロンスペクトルの計算など基本的物理量を決定した。更に非自明なトポロジーを持つ配位の生成を行うことによって、トポロジカルチャージの効果を調べている。また、これまでより大きなサイズである24^3×48の格子での配位の生成を開始した。これによって有限格子サイズによる系統誤差を定量的に見積もることができ、より精密に物理量を計算できるようになる。生成された格子上での物理量の測定も順調に進んでおり、これまでに2フレイバーの配位を用いた核子中のストレンジクォークの効果、カイラル摂動論との精密な比較、Sパラメターの測定、真空偏極による結合定数の測定などが公表されているが、これらを2+1フレイバーに拡張することを進めている。 大きな格子サイズでの計算ではこれまでの数倍の時間がかかるため、アルゴリズムの改良やプログラムの高速化のための研究も継続して行っている。その中ではクォーク線形方程式に対する5次元解法の改良について進展があった。これは近似的な4次元の解があった場合に、そこから5次元の近似解を構成する方法で、これを用いて5次元方向のサイズを変えながら解くアダプティブ解法、時間発展中にそれまでの解からの外挿によって近似解を求める手法などが5次元解法に対して応用可能となる。これらがどの程度実際のシミュレーションを高速化できるかについて定量的に見積もることは今後の課題である。
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