2007 Fiscal Year Annual Research Report
エックス線および核ガンマ線観測による雷電場での粒子加速メカニズムの解明
Project/Area Number |
19740167
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
土屋 晴文 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 協力研究員 (70415230)
|
Keywords | 粒子加速 / γ線 / 雷 / 雷雲 |
Research Abstract |
近年、雷放電の最中に、ミリ秒かそれ以下の継続時間をもつX線や、まれに10MeVを超えるγ線が衛星や地上の装置で検出され、電子が相対論的エネルギーにまで加速されている直接的な証拠とされている。一方、日本でも、日本海側で雷がよく起こる冬季にのみ、沿岸の原子力発電所構内で、定点観測用のモニタが突発的な増加を示すと、以前より報告されている。しかし、その増加の継続時間が数秒から数分と長く、前述のミリ秒以下の継続時間の放射とは明らかに違う特徴をもつ。そこで、なぜ、雷活動に関連して、このように継続時間の違う放射があるのかを明らかにし、その源になっている電子加速を科学的に検証するため、従来の定点観測用のモニタよりも感度が高く、放射線の種類、到来方向、エネルギースペクトラムといった基本的な情報も測定できる新型の装置を開発した。そして新潟県の柏崎刈羽原子力発電所構内に設置して、2006年12月末より観測を開始した。設置した装置には、雷活動による光、音、電場の変化を同時に測定するセンサーをも備えた。その結果、2007年1月7日の早朝に、雷が光る70秒前より40秒間にわたり、上空から10MeVに達するγ線を初めて捉えた。このことは、雷放電ではなく、雷雲中の強い電場により、電子が少なくとも10MeV以上に加速され、制動放射によってγ線を放射していることを示し、雷雲そのものが天然の粒子加速器であることを強く示唆する。さらには雷雲から放射されるγ線は、相対論的なビーミング効果のため、地上の狭い領域のみを照らしながら、雷雲とともに移動しているという、今までにない新たな仮説も提案した。2008年冬季の観測でも、すでに同様な雷雲からの10MeVガンマ線を観測しており、雷雲が粒子加速器であることを間違いないものにした。
|
Research Products
(12 results)