2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740171
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾田 欣也 Osaka University, 大学院・理学研究科, 助教 (60442943)
|
Keywords | ブラックホール / 5次元ゲージ理論 / 超対称量子色力学 |
Research Abstract |
今年度一番のメインにかる研究は、クォーク・グルーオン・プラズマを高次元ワープ空間上のブラックホールで記述ずる、というものである。 宇宙が始まって1マイクロ秒しか経っていない頃に宇宙を満たしていた1兆度にも達する超高温のクォーク・グルーオン・プラズマがRHICにより地上で生成された。特にこのプラズマが、非常に小さな単位自由度あたりの粘性(超流動を示す液体ヘリウムのそれよりも小さい)を示すという事が発見された。このように小さな粘性は、素過程における非常に大きな相互作用を示唆している。粘性のような時間依存性が本質的な動力学的過程に伴う物理量を、大きな結合定数(相互作用)の下で解く事は不可能であらた。このような量子色力学相転移付近の温度でのクォーク・グルーオン・プラズマは共形性という性質を持つ事が実験的に示唆されている。そのような領域で量子色力学のクオーク・グルーオン・プラズマと同じように振る舞う事が期待されるN=4超対称非可換ゲージ理論に対しては、いわゆる反ドジッター・共形場理論対応により、5次元超重力理論の古典解を調べる事により、様々な物理量が計算できる。特に5次元時空に特異点が出ない、という要請を置く事により、この極端に小さな粘性の値を理論的に予言する事が可能となった。 我々の研究においては、世界で初めてN=4超対称非可換ゲージ理論のプラズマの双対となる5次元反ドジッター・ブラックホール時空に事象の地平面が存在する事を証明した。事象の地平面の存在、ひいてはそこからのホーキング輻射の存在は、有限温度のプラズマの存在と双対となる非常非常に重要なものである。また、粘性の値に代表されるN=4超対称非可換ゲージ理論のプラズマの側の物理量を適切に選ぶ事により、時空上の原点を除いた全ての点で特異点が存在しないようにできる、という事も我々が初めて証明した。さらには、この物理量を適切に選ぶ選び方が、一意的であること、すなわち、特異点の不存在により、N=4超対称非可換ゲージ理論のプラズマの側の物理量が完全に決定される事をも証明した。
|