2008 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における光誘起相転移の初期ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
19740176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松崎 弘幸 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (80422400)
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Keywords | 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 時間分解ポンプープローブ分光 / 遷移金属酸化物 / 有機半導体 |
Research Abstract |
光照射にようて、物質の電子構造や巨視的物性が変化する現象は、光誘起相転移と呼ばれ、強相関電子糸を中心に活発な研究が行われている。この現象の物理的機構を明らかにするためには、電荷・スピン・格子の各自由度の時間変化を正確に検出する必要がある。しかしながら、強相関電子系においては、これらの自由度の時間変化は、極めて高速であり、汎用の時間分解能200フェムト秒のポンププローブ分光測定では不十分たであった。では、これらの問題点を解決するために、主に時間分解能30フェムト秒のポンププローブ分光測定系を構築し、強相関電子系の光誘起相転移の初期ダイナミクスを明らかにすることを目指した。まだ、現有の200フェムト秒ポンププローブ分光測定システムを用いて、様々な物質系について、新規光誘起相転移の探索も行った。以下に、本年度の主な成果を述べる。 I. 昨年度構築した時間分解能30フェムト秒ポンププローブ測定システムを用いて、電荷/軌道秩序物質であるPr^<0.4>Ca^<0.6>MnO^3について、光誘起電荷/軌道融解の初期ダイナミクスを詳細に調べた。その結果、電子相関の効果によって、時間分解能(30fs)以内に、瞬時に秩序相が融解し、その後、これに引き続いて複数の酸素原子由来のコヒーレント振動が発生することを見出した。特に、軌道秩序の安定化に重要なヤーンテラーモードに由来するコヒーレント振動が、相融解の初期過程で顕著に観測されることを明らかにした。これらは、秩序相の安定化に、隣接サイト間のクーロン反発と軌道秩序が重要な役割を演じていることを示す重要な結果である。 II. 二次元銅酸化物(La_2CuO_4. Nd_2CuO_4)について、200フェムト秒ポンププローブ分光測定を行い、光誘キャリア注入時の電荷・格子ダイナミクスについて調べた!Nd_2CuO_4においては、30フェムト秒ポンププローブ測定から、光誘起金属状態は、弱励起下(<0.005 photon/Cu)でも生成され、緩和時間40フェムト秒で元の状態に回復することを見出した。La_2CuO_4においても、光誘起金属化は起こるが、金属化に必要な励起密度はNd_2CuO_4のそれに比べて高く、電荷格子結合がより重要であることを示している。
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