2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740177
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 修一 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30282685)
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Keywords | 量子スピンホール系 / トポロジカル絶縁体 / エッジ状態 / ビスマス / 励起子 |
Research Abstract |
本年は、スピンホール効果のうち特に興味深い現象である量子スピンホール効果についていくつかの興味深い成果を得た。第一の成果として、量子スピンホール系をどのように探索するかの鍵を得るため、何らかのパラメタを変化させたときに、通常の絶縁体と量子スピンホール系がどのように移り変わるかを解析した。その結果3次元の量子スピンホール系においては一般に、絶縁相との間で直接相転移が起こらずに、その間に金属相がはさまることが分かった。こうした成果は、量子スピンホール系に特有な新奇現象であって実験で観測できるとともに、量子スピンホール効果を示す物質を探索する場合にも役立つ。 第二にビスマス薄膜が量子スピンホール系になるかどうかについて、第一原理計算により研究した。ビスマス薄膜のうち絶縁体になるものは(111)1-bilayerと{012}2-monolayerの2種類存在する。これらについてトポロジカルナンバーを計算し、この2種の薄膜のうち前者は量子スピンホール系、後者は通常の絶縁体になることが分かった。これらのエッジ状態についても計算し、上記の分類と合致することが分かった。 また第三に、スピンホール効果の研究の一つとして、励起子系のスピンホール効果について研究した。Cu_2Oやアルカリハライドなどの励起子のバンド構造から、励起子状態での波数空間のベリー曲率を計算することにより、スピンホール効果がどの程度起こるかを見積もった。この励起子スピンホール効果は結晶に局所的な歪みを与えることにより起こる。励起子はある寿命の後に発光することから実空間での励起子の運動を知り、スピンホール効果を観測することができることを提案した。
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