2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740180
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
越野 幹人 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (60361797)
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Keywords | 物性理論 / 半導体物性 / ナノチューブ・フラーレン |
Research Abstract |
2層グラフェンの電気伝導と局在効果に関して以下の研究を行った。単層グラフェンのバンド構造の特徴は電子バンドと正孔バンドが零ギャップで接していることであり、電荷中性点における電気伝導度は量子化伝導度程度の値を持つことが知られている。一方2層グラフェンのバンドも零ギャップであるが、単層のように線形ではなく有限の有効質量をもったバンドが接する形となる。さらに層と垂直方向に電場を印加することで電子正孔バンド間にギャップを与えることができ、外場による電子状態の制御方法として期待される。ギャップが開くと一見通常の半導体と同じような状況に見えるが、不純物中の局在効果に以下のような特異な性質を持つことを示した。2層グラフェンの電子状態はギャップの無い場合全て局在するが、電場を印加しギャップを零から大きくしていく過程で、必ず局在長が発散する点が存在する。これはバンドに内在する「ベリー位相」に関連した一種の量子ホール転移として理解することができ、磁場を使わずに電場のみで制御できる新しい量子相転移であることが示された。 また、2層グラフェンにおけるゲート電場の遮蔽効果について以下の研究を行った。クーロン相互作用を取り入れた自己無撞着な計算により電場下でのバンド構造を決定した。これによりゲート電場は遮蔽効果により半分程度に減少することが明らかになった。さらにゲート電場が電子格子相互作用を通して格子振動に及ぼす影響を調べた。電場が上下層の間の対称性を破ることにより、格子振動の対称モード、反対称モードが強く混合することが示された。
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