2007 Fiscal Year Annual Research Report
低次元電子系における量子輸送現象、完全計数統計と量子絡み合いの理論的研究
Project/Area Number |
19740189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井村 健一郎 The University of Tokyo, 物性研究所, 研究機関研究員 (90391870)
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Keywords | メゾスコピック系 / スピントロニクス / 完全計数統計 / 量子ドット / 単一分子伝導 / スピンゆらぎ / 朝永ラッティンジャー液体 / 不純物問題 |
Research Abstract |
単一分子伝導の物理のひとつの方向性に分子の持つ固有のスピンに着目した単一分子スピントロニクスがある。我々は、このような分子を介した伝導における揺らぎの問題、とりわけ揺らぎの完全計数統計について、トンネル現象がインコヒーレントに起こる領域を考える。このような領域で、Bagrets-Nazarovの方法[1]を拡張し、電流と電荷、あるいは、スピンまで含めた同時確率分布を扱えるように一般化した。さらに、電流と電荷の同時確率分布に関しては、角運動量の合成則を援用して、解析的な結果を得た。[2] 次に問題になるのは、単一分子量子ドットの左右につけるリード線が強磁性的な場合である。我々は最近、左右の強磁性的なリード線の磁化方向が平行、あるいは、反平行の場合は、電流や電荷の揺らぎだけでなく、スピンの揺らぎもKorotkovの確率過程を解析する手法[3]と計数場の方法の両方で、任意のスピン偏極Pの値に対して、解析的に計算できることに気づいた。しかも、驚いたことに、スピンの揺らぎだけは、分子のスピンによって、非常に大きく増幅される(例えば、揺らぎの大きさを表す特徴的な係数を列挙してみると、分子のスピンのない場合(s=0)に1/3、s=1/2の時22/5、s=1では138/7というように急激に増え、例えばs=10というような比較的大きなスピンを持った分子に対しては、巨大な数になる。)ことが分かり、この結果を論文にまとめた[4] [1] D. A. Bagrets, Yu. V. Nazarov, Phys. Rev. B 67, 085316 (2003). [2] K.-I. Imura, Y. Utsumi, T. Martin, Phys. Rev. B 75, 205341 (2007). [3] A. N. Korotkov, Phys. Rev. B 49, 10381 (1994). [4] T.Jonckheere, K.-I. Imura, Th. Martin, arXiv: 0803.3058.
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